こんにちは!ハシルデザインのタンダです。
少し前に、満を持して公開された「トップガン マーヴェリック」を鑑賞してきました。
そこで私はヒシヒシと、
- 求められていることにしっかり応えることの大切さ
- ベタでも王道を押さえる大切さ
を文字通り目の当たりにしました。
ちなみに私は前作のトップガンを満足に見たことがなく(幼い頃にテレビで見たかも知れませんが記憶にない)思い入れもほとんどない状態です。
ですがトップガンのメインテーマや主題歌のデンジャーゾーンを聞いて打ち震えていた内城(47歳)を見ていると「トム・クルーズは本当のエンターテイナーだ」と実感しました。
そこで今回はほぼネタバレなしで、どの点が素晴らしかったかをしたためていきます。
というのも、この「求められているもの、王道をしっかり押さえること」は幅広い物事で大切だと感じたからです。
※ちなみにアイキャッチは本編と関係ない、有人飛行最速の偵察機ブラックバードです。
出し惜しみ無く最初からデンジャーゾーンをぶちこむサービス精神
まず、最初のシーンからおなじみのメインテーマが流れ、空母から飛び立っていく戦闘機のシーンが流れます。
戦闘機の轟音でちょっとテンションが上ってるところ早々に、ケニー・ロギンスのデンジャーゾーンが、字幕付きでそこそこの長さで流れました。
もうここで、往年のトップガンファンなら「帰ってきたー!!」とドーパミンドバドバだったことでしょう。
内城も「こみ上げてくるものがあった」と後に語っていました。
期待されている前作絡みの要素を出し惜しみしてファンを疲れさせる作品も少なくない中、開始わずか5分程で前作ファンが欲しかったものを惜しみなくぶちこんできたトム・クルーズのサービス精神に感服です。
そしてこの時点で前作ファンはある程度安心したのではないでしょうか。
マーヴェリックのヒーローっぷりと時の流れの残酷さをテンポ良く魅せる
満を持していつものカワサキのNinjaに乗って現れたマーヴェリック。
ここでも前作でシンボリックに扱われていたカワサキのバイクは存在感を発揮します。(今回の撮影で6台供与したとか)
少々無茶をしつつ最新機でマッハ10の無謀なテスト飛行に挑戦するヒーローなマーヴェリックを堪能したあとは、若いトップガンたちをかつての自分たちに重ねるシーンでは否が応でも時の流れを感じさせました。
前作のトップガンの時23歳だったトム・クルーズも59歳。
36年の歳月を鑑賞者にも感じさせるような演出は、より一層前作からのファンを引き込んだでしょう。
構成の端々にマーヴェリックからトップガンを見た新参組にもわかる最低限の説明的な要素を入れつつも、やはり大切にしているのは前作トップガンから楽しみにしていたファンたち。
この空白の36年でさえ、共有していたかのような構成は脱帽です。
トム・クルーズが演じていると忘れそうなほど、寂しそうなマーヴェリックに圧倒されました。
マーヴェリックの立場がファンとリンクする
今回マーヴェリックはプレイヤーではなく教官という立場です。
初めての教える立場になり、部下と上官との板挟みで苦悩するさまに共感した人も多かったのではないでしょうか。
トップガン世代の人たちは、もはやマーヴェリックへの感情移入がこの時点でMAX。シンクロ率100%です。
さらに、自分とは全く違い、別ルートで上り詰めたかつての同僚アイスマンに再会したりと、懐かしかったり共感したりと前作ファンは忙しかったことと思います。
飛行シーンの臨場感へのこだわりがえげつない
今回の飛行シーンの撮影は、実際にIMAXの機材を機内に積み込み撮影したのだとか。
機内の定点からの映像が多かったですが、実際の映像なので生々しく、Gに耐えるシーンに思わず歯を食いしばった人も多かったのではないでしょうか。(私は食いしばりましたw)
機内のカメラ操作は俳優自身がするし、エチケット袋の欠かせない過酷な撮影だったそうです。
そんなミッションを課すところからわかるように、トップガンの見どころシーンである飛行シーンは、トム・クルーズもかなりこだわり、この映像が撮れる技術レベルになったから今回のトップガン マーヴェリックを制作したと言うほど。
おそらく、背景を合成するだけなら比較的簡単にCGで作れたと思います。
しかし実際に飛行してるからこそ演技以上の顔の歪みや表情が出てきて、CGには出せない臨場感ありました。
ファンが楽しみにしているシーンとは言え、ここまでまっすぐに応えるトム・クルーズはやっぱりずば抜けています。
トップガン世代でなくても、このCG全盛の時代に本物にこだわった映像が響いた人も多かったでしょう。
やるならトコトンをこのレベルで体現されるとぐうの音も出ません。
少々ご都合主義でも欲しいものはきっちりファンに見せる(F-14とか)
あまり詳細に書くとネタバレになるので書きませんが、前作の主力機、F-14トムキャットも登場して可変ウイングの健在っぷりをアピールします。
今回、敵機で第5世代の戦闘機、マーヴェリック側でF-18が登場しますが、やはりF-14のフォルムはカッコいいです。
(というか第5世代のフォルムはほぼわからなかったw)
性能面では絶対にかなわないのに、それでもF-14をシナリオ的に少々無理があってもちゃんと出すあたりはもうすごいサービス精神。
しっかり前作のレガシーも押さえる。トップガンの続編として文句なしだったと思います。
つくり手の情熱を感じる仕事に触れる大切さ
やっぱり、人間ちょこちょこ感情を揺さぶられるような体験をしないと無気力になっちゃうな、と今回思い知りました。
特に今回のような、つくり手の鬼気迫るこだわりや情熱が感じられるものに触れて刺激を受けることは、本当に必要なことです。
ある程度年齢を経ると、涙もろくなる反面、感性や感情が鈍感になる気がしています。摩耗するというか。
でも強い刺激を受けると、しばらく感受性の感度が良くなります(あくまで私の場合)。
この強い刺激はショッキングなものである必要はなく、情熱やこだわりなど強いエネルギーを感じるものであれば十分。
だから映画だけでなくても、美術品や工芸品、はたまたスポーツ観戦でもいいと思うのです。
要するに、自分の感情が揺さぶられる好きなものの中でも、純度が高く質が高いものに触れることが大事。
感性を磨くというよりは、取り戻す感覚に近いですね。
「最近なんか張りがないなー」と思われている方は、ぜひトップガン マーヴェリックを見てください。
できればIMAXシアターで。
新しいものを生み出す気概も大切だけど、押さえるところはしっかり押さえる
私もデザイナー、表現者の端くれです。
スキあらば「なんか面白いことしてやろう」と奇抜な案を入れたくてウズウズしています。
しかしそれはクライアントのニーズを完全に満たしてからの話。
ニーズを満たさずにそれだけ出せば、単に「自分よがりのダメな案」です。
今回のマーヴェリックで、前作トップガンのストーリーや登場人物の関係性を一切無視して旬の俳優ばかりを起用し、CGでの新しい映像表現や架空の超科学な戦闘機なんか出してたら今回の高い評価はなかったと思います。
トップガンの続編を見に来た人は、トップガンの続きを見たいのであって、トム・クルーズの新しい表現が見たかったのではないのです。
そしてトム・クルーズはそのニーズを過剰と言えるまで汲み取り、徹底的に前作ファンを尊重しました。
トム・クルーズ自身、前作のトップガンを愛していたからできた映画なのだと思います。
それほど強い愛があっても主観に溺れず、ベタで王道でも欲しい物をしっかり高いレベルで提供することの大切さを本当に思い知りました。
まさに「観客を楽しませるために限界に挑戦」です。
トップガンは米空軍ではなく海軍の話
最後にちょっと面白かった余談を。
一般人は戦闘機=空軍と思いがちですが、トップガンは空母から飛び立つ戦闘機なので米海軍のお話です。
海軍と空軍、仲悪いのか…。
コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして。
おもしろく読ませていただきましたが、
前作は1986年で36年前です
当時のトム・クルーズは33歳ではなく、23歳
文中では33歳は 26年前になっています。
ご確認願います。
ゆうさん
コメントありがとうございます!
わー!すごい計算間違い!
助かりましたm(_ _)m
重ね重ねありがとうございます!